もう守山市に住んで10年以上になりますが、その間ずっと「やっぱりいいな」と思い続けている場所があります。それが、守山から大津を結ぶ全長1.4kmの「琵琶湖大橋」です。毎週土日にもなれば、県外からの車もたくさんやって来て利用されるこの橋ではありますが、地元民としてちょっと誇らしいスポットであり、生活の中でも何度も通るおなじみの道。でも、この橋はただ湖を渡るためだけの存在じゃありません。走るたびに違う景色を見せてくれて、思い出や感情までも運んでくれる、不思議な魅力を持った場所なのであります。
ちょっと歴史をたどると…
琵琶湖大橋ができたのは昭和39年(1964年)9月28日。
湖東と湖西を直接つなぐことで県全体のバランスある発展を促し、琵琶湖観光も盛り上げよう!という目的で建設されました。当時は2車線だけのシンプルな橋でしたが、昭和55年(1980年)に自転車・歩行者道を追加。さらに平成6年(1994年)には4車線へ拡幅され、平成31年(2019年)2月にはETCも導入されました。ちなみに建設費は492億8千万円。数字だけ見るとびっくりですが、半世紀以上も滋賀の“大動脈”として活躍していると思えば納得です。
実際に渡ってみると…
僕は家族で湖西へドライブに出かけるとき、この橋を通るのがちょっとした楽しみになっています。車で走り出すと、すぐに左右いっぱいに広がるのは琵琶湖の大パノラマ。視界のほとんどが湖と空で占められて、まるで空中を走っているような感覚になります。晴れた日には、水面が陽の光を受けて細かな粒のように輝き、そのきらめきが絶え間なく流れていきます。風が穏やかな日には湖面が鏡のように静まり返り、空や雲の形がはっきり映り込むのも美しい光景です。逆に風が強い日には、小さな波がきらきらと踊っていて、それもまた迫力があります。
橋の真ん中あたりまで来ると、守山市側から行けば、右手には比良山系の山々、大津市から守山へ帰る時には近江富士(三上山)が見えて、ここは何度通っても「いいなぁ」と感じる瞬間です。山々のシルエットが季節や時間によって変わり、春の霞んだ風景も、冬の雪化粧した姿も、それぞれ味わいがあります。個人的には、朝の澄んだ空気の中で渡るのが特に好きです。早朝の湖は人も車も少なく、静かな湖面と淡い光の中を走る時間は、日常の中の小さな贅沢。橋を降りたあともしばらく、その光景が頭の中に残っているほどです。
自転車や徒歩で渡る楽しみ
昭和55年(1980年)に設置された自転車歩行者道は、湖風を全身で感じながらゆったりと進める、とても贅沢な道です。ガードレールの向こうに広がるのは、どこまでも続く琵琶湖の水面。風が少し強い日は波がキラキラ光り、静かな日は湖面が鏡のように空を映します。春は菜の花や桜の季節と重なり、柔らかな風が心地よく、遠くの山々がくっきり見えることも多いです。秋は空気が澄んでいて、日差しが少し傾く午後の時間帯が特におすすめ。赤やオレンジに色づく山並みと、青い湖のコントラストが鮮やかです。
自転車ならあっという間に渡れてしまいますが、写真好きなら絶対に途中で足を止めてしまうはず。歩く場合は片道20〜30分ほどかかりますが、そのゆっくりとした時間こそが魅力。普段は車で一瞬の距離も、歩いてみると「こんなに長かったんだ」と新しい発見があります。途中で立ち止まって深呼吸をすると、湖の匂いと風の音がはっきりと感じられて、まるで別世界に来たような気分になります。
周辺スポットとセットで楽しむ
守山側
守山側の代表的な景色といえば、「第1なぎさ公園」。冬から早春にかけて咲く一面の菜の花と、奥にそびえる雪化粧の比良山系とのコントラストは、地元民でも何度も見たくなる絶景です。夏はひまわり畑が広がり、黄色い大輪の花と青空、琵琶湖の青が映えるフォトスポットとして人気。
また、橋のたもとには大型商業施設「ピエリ守山」があり、ショッピングはもちろん、地元食材を使ったレストランやフードコートも充実しています。休日はランチやカフェタイムを楽しんでから琵琶湖大橋へ向かうというプランもおすすめです。さらに少し足を延ばせば、地元農産物が集まる直売所「おうみんち」や、子どもが喜ぶ「佐川美術館」もあり、半日〜1日の観光コースが組めます。
大津側
大津側に渡ると、湖西エリアの魅力が一気に広がります。まず立ち寄りたいのは、橋のすぐ近くにある「道の駅びわ湖大橋米プラザ」。地元特産品の販売や、湖を一望できる展望デッキ、軽食コーナーがあり、ドライブ途中の休憩にぴったりです。
そこから少し南に行けば、古い町並みが残る堅田エリアへ。「浮御堂(満月寺)」は琵琶湖に突き出した舞台のようなお堂で、湖上に映る姿が美しいことで有名です。さらに車を走らせれば比叡山延暦寺へもアクセスでき、歴史散策と自然の絶景を同時に楽しめます。北へ向かえば、真野や和邇、蓬莱など湖西ドライブの人気スポットが続き、夏には湖水浴やキャンプも楽しめます。
利用情報
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区間:守山市洲本町〜大津市真野普門町(国道477号)
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延長:全区間15.4km(うち大橋は1.4km)
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開通:昭和39年9月28日
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建設費:492億8千万円
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料金徴収期限:令和16年(2034年)10月22日まで(令和4年1月24日変更許可)
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料金徴収時間:終日
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ETC:平成31年2月から利用可能
守山市民のひとりごと
正直に言えば、地元民としては「料金、さらにもうちょっと安かったらなぁ…」なんて思うこともあります(笑)。でも、湖西と湖東を一気にショートカットできるこの橋の存在は、本当にありがたいんです。特に観光シーズンや週末の渋滞時、湖岸道路を延々走るよりもずっとスムーズ。仕事や買い物で急ぎたいときはもちろん、家族でのお出かけや友人とのドライブでも頼りになる道です。そして何より、この橋を渡るときに見える琵琶湖の景色は、その日その時でまったく違う表情を見せてくれます。春は柔らかい日差しの中で水面が淡く輝き、夏は真っ青な空と湖が一体になったような爽快な景色。秋は夕暮れの黄金色が湖面を染め、冬は雪化粧をした比良山系と、冷たくも美しい湖が迎えてくれます。観光で来られるなら、ぜひただ車で通り過ぎるだけではなく、景色を楽しむ時間をとってほしいです。
僕のおすすめはやっぱり夕方。西の空がオレンジから赤、そして群青へと変わっていく間、湖面がゆっくりと色を移し、まるで大きな絵画の中を走っているような感覚になります。
何度渡っても、その瞬間には「やっぱり滋賀っていいな」と心の中でつぶやいてしまいます。